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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

「やっぱり、そうかなあ。こわいもんだなあ」

蒲原はこういう制作に必要な、日本のメーデーのスケッチやクロッキーをモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へはもって来ていなかったのだった。そういう条件をありのままに告げて、新しく協議した結果、蒲原は、主題をかえて、二月の東京市電のストライキのときに、男女従業員が催涙弾で襲撃された事件を描くことになった。

プロレタリア美術家同盟の事務所から伸子とつれ立ってかえりながら、蒲原順二は、

「こっちの画家って、率直ですねえ」

自分の制作がパスしなかったことについて、彼は格別しょげてもいず、意外に感じてもいない風だった。

「こっちの画家は、大衆の目そのもので、絵を見ようとしているらしいですね。よその国の画家たちみたいに、メチエなんかに、あんまりひっかかっていないんですね」

美術学校の教育をうけた日本の青年画家として、ドイツの左翼美術家の仕事を見た上でモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へ来た蒲原は、ソヴェト画家のめざそうとしている新しいリアリズムの方向について、自分の制作がうけた批評そのものから、何かを理解しようとしているようだった。