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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
きょうフランスで絵画的と云われることは何を意味するのだろう。現実分解や図解、きそってのディフォーメーションは、それが新しい美への試みであるという諒解、そのために現代が忍んでいる寛容さの上になりたっているもののように伸子には思えるのだった。視覚をとおして来る美の感受よりも、より多量に認識の問題であり、そこからの試作のようにも思える。画家のほんとの心情的なものは、こういう飛躍のうちに疲れるだろう。画家の主観より、現実は常により強固であり実体的であるのだから。伸子は、血をぬかれ、平べったく透明なきれぎれにされていない新しい美を欲するのだった。でも、そういう美はどこから生れるのだろう。新しい社会であるソヴェトから、というのは簡単であるけれども、ソヴェトの十年は、文学よりも絵画の新生のむずかしさを示していると、伸子は考えしずむのだった。これらのことが磯崎恭介と率直に話せたら、面白いことだったろう。だが、磯崎恭介は、伸子たちに、自分の制作をまだ一枚もみせていなかった。そのことは、おのずから彼とのつきあいのなかに画された一線となっていて、伸子たちは絵について全く素人である自分たちを、絵の問題からはしめ出しておかなければならない形だった。