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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
七
けれども、碧い遠くの海のきらめき、その上の白雲のある空。ちらりと見えている砂地と前景の樹木。龍舌蘭のような草の大きい白い花房。軟かく、みずみずしく、光にあふれてそのひとすみの自然の美しさがとらえられている。伸子はその絵を見て、おどろいた。エジプトの彫刻にある女のように、まじめで端正な表情をうごかさない、口かずのすくない須美子に、こんなに柔軟自在で生命感のつよい表現力があり、大胆な色彩の感覚が潜んでいることをおどろいた。
「これは、やっぱりホノルルですけれど――街の方」
棕梠の並木に沿って、明るい岱赭色の道がなだらかに彎曲しながらのびていて、そこを走り去っている自動車のうしろが見える。近いところの白壁の家、その窓々の日除け、単純な筆致の画面からも、伸子をうつのは愉悦の感情だった。その光の下に、それらの物体が存在し、それを見ていることのたのしさに鳴っている須美子の感受性がある。最後の一枚はホノルルの公園のベンチのあたりを中心にした風景だった。遊んでいる子供。ベンチにかけている黒服の老婆。花の咲いている花壇。画面には、その色のまま手にすくわれて来そうに明るくて芳醇な空気があった。