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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

それを、須美子は、すらりと日常的なたいへんさに解釈した。

「磯崎も気の毒ですわ」

まっすぐに正直な視線で、画面にこめられている努力と、その進境をはかろうとするように眺めながら須美子は、

「あちらの御両親がもうすこし、わたしたちの生活を理解して下さると、磯崎もよっぽど楽なのでしょうけれど」

と云った。

「生活費は来ているんでしょう?」

そうきいたのは素子だった。

「それはどうにか来ていますけれど……こちらの生活を御存じないから、どうしても若いもの二人がパリですきなことをして暮しているとお思いになりがちですのね」

返事のしようなくて伸子たちはだまってしまった。

「あちらの御両親は、わたしがお金をつかいすぎる女だとお思いになっているんです。それが、せつないんですの。あいにく、子供が二人もつづけて生れてしまいましたし――絵の具なんかも一年一年と高くなって来ていますのよ、磯崎だってどの位買いたい絵の具や額ぶちのようなものを辛棒して買わずにすましているかしれないんですのに――それを思うと、何だかわるくて……」

須美子は、素子を目の前に見て話しているうちに日本の生れた家や気だてのおとなしい親たちを身近に感じるらしかった。