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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

そして、ソヴェトの生活について、いつも必ず一定の距離をおき、それに感動しないということを外交官というものの特質のようにしている人々の雰囲気にふれてゆく。伸子には、そこにわりきれない心持がわくのだった。伸子自身、大使館で夜をふかすことがあったのだし、こんど急な病気で半分意識が朦朧としたとき、フロムゴリド博士をよび、自動車をまわして入院させてくれたのは、大使館の河井夫妻の親切であった。そういう個人的なつき合いが深まりそうになるごとに、伸子の心の隅にはソヴェトにおける日本の外交官というものの伸子にとっても信頼しきれない性質が思い浮んだ。そして伸子は神経質になるのだった。けれども素子には、真実な感情を表明しないことがその根本態度であるような大使館の雰囲気はそれとして、つき合ってゆけるらしかった。素子には、同時にたちのちがう二様の世界へ触れてゆくことが可能であるらしかった。駒沢で暮していたころ、素子は伸子よりずっと先に唯物史観の本をよみながら、同じときに京都へかえれば祇園のおつまはんとの全く伝統的な花街のつき合いをしていたように。伸子にはそういう風な気持の融通がなかった。