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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

若夫婦を同伴するのは、二人に対する親の恩恵ということが多計代のかきぶりのうちにはっきり示されていた。たとえ自分の健康がどうあろうとも伸子を見舞おうと決心したことは、親の限りない愛だ、と自分からきめて多計代が言っていると同じに。でもそれは、伸子としてそれだけの単純さにはよめないのだった。だって多計代の「このたびわれわれ外国行につき」という言いかたは、たった二十ことにもみたないながら、何とわれわれと多計代と泰造とを主体とし、決定的に言われていることだろう。お前のところへゆくについては、と行く手に伸子の姿を想像して言われてもいなければ、若い人たちにも見せてやりたいしと、かばったところの感じられるもの言いでもなかった。われわれ外国行きにつき、多計代がこうと思うことはみんなその目的にしたがえさせられる。あれもこれも親心の発露というしめくくりのもとに。そしてもっと伸子をせつなくしたことは、多計代は会う人ごとに、新聞、雑誌の記者たちにまで、こんどの一家総出の外国行きは伸子に対するやむにやまれぬ親心からこそ企図されていることを吹聴しているらしいことだった。

伸子は腋の下がじっとりするようだった。