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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
話しがすんで、いくらかゆとりのできた伸子は、いぶかしがる視線で、部屋の奥にかたまっている人たちの方まで見た。そっちの壁には、ドイツの趣味で紫がかった水色タイルで飾られたカミン(煖炉の一種)が四角くつきでていた。その左右のくぼみへ椅子をひきつけて、若い人々が云い合わせたようにその隅にかたまっていた。その一番隅っこのところで、三十三四の一人のひとが、カミンへ肩と頭とを軽くよせかけた楽な姿勢で腕組みして居た。その人は組合わせた脚をゆるくふりながら、唇をしめたまま微笑していた。伸子の視線がその微笑にとめられた。それは智慧のあらわれた微笑であり同時に批評をたたえている微笑だった。その表情が暗示するものがあった。伸子は視線をもどして、勿体ぶって間接に質問した人や自分がそこでかこまれているテーブルのぐるりの人々を見直した。どっかりと自分たちをテーブルのぐるりに落つけている人々はみんな概して年配であった。カミンのところにかたまっている後輩たちが、当然彼らのためにその場所をあけておくものときめてそこへかけているような人々だった。ベルリンの木曜会なるものの性格が伸子に断面を開いたような感じだった。