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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
その伸子はいまパリにいてペレールのアパルトマンへ日に一度は顔を出し、親たちや弟妹とブーローニュの森の散歩だの、ルナ・パークでの他愛ない遊びにつれだったりしているから、もう東支鉄道問題がどうであろうと、泰造にとってそれは外国でよむ一つの新聞記事にしかすぎないのだろうか。
赤インクのカギがいくらか荒っぽくかけられた新聞をモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)で見たとき、伸子は苦しかった。そういうものを送られたことについて、忘れがたい印象をうけた。パリでの暮しで、泰造がパリというところにはきびしい人間の思想がないように、自由に成長しようとする人々の苦しくまじめな階級のたたかいがないように、安気そうなのは、またそれとして伸子の関心をひくことだった。
七月二十三日の夜あけがた、パリの警視総監は、パリの市内のあちこちで、手あたり次第に多数の共産党員を逮捕させた。東支鉄道問題以来、ファシズムに反対、ソヴェトを侵略からまもれ、という声は労働者ばかりでなくひろい知識人の層からもおこっていた。八月一日の反戦デーの準備は大規模に精力的にすすめられているらしかった。