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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

そこに私が加わると、尚更いけない理由があった。

私の女房の京子は、一馬の親父の歌川多門の妾であった。妾や手カケの数あるうちで、特別寵愛のこもった女で、だから戦争中、まさか自宅へ入れるわけには行かないから(当時は梶子夫人がまだ存命であった)、自分の村の一軒をかりて疎開させた。私は京子と恋におちて、終戦と共に強奪して、東京へ引揚げてきたのである。

多門の怒りは狂暴なもので、風の便りにもいっかな余憤おさまらず、あいにく又、大臣級の政治家で、これからオレの天下と大いに希望のあったところを、てもなく追放になる、すっかり苛々、私がつまりその苛々の分まで憎まれ役に廻っていたようなものである。然し去年の夏、梶子夫人が死に、まもなく下枝という村の相当の家の娘に目をつけて、無理に小間使いに、つまり侍女、妾、それで御機嫌が直ったそうで、追放後の閑のからだを今では十九の小娘を寵愛して鼻の下を延しているという話であった。

「モクベエや小六と違って、僕がまさか君の家へ行ける筈がないじゃないか。御尊父の御機嫌がいくらかまぎれているにしても、僕はそのいくらかでも不快な思いを好んで見たくはないからな。