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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

恐らく彼には昨夜の記憶がまだあるのだろう。学究肌の木ベエは、女性的に執念深く、一つのことに深くこだわるタチであった。

「勝手に調べだすがいい。探偵はそれが職業さ。私は病人を診るのが職業だから、それについては責任をもつ。ほかのことは知らん」

「矢代さんと歌川さんは裏門で海老塚さんと一緒になられた。矢代さんは例の裏道、大八車の道をこられた。歌川さんは禅寺から来られた。海老塚さんは村の方から来られたのですね。そのときの時間は?」

「まア、だいたい八時ごろでしょう。日がとっぷり暮れたとたんというところだから。そうじゃないかな。このへんの山中じゃ、山にかくれて、日暮れが早いかも知れないな」

私がそう言うと、警部は、

「イヤ、分りました。じゃア、土居さんが一番に戻られて、七時か六時五十分ごろ。つぎに内海さん、次が神山さん、歌川さん。歌川さんはいったん戻って又でかけられた。次には?」

「僕と人見さん」と巨勢博士。

「それから三宅さん。丹後さん。矢代さん。それで全部ですね。御婦人方はどなたかその時間に外出なさいましたか」

「私たちは全部そろって広間にいました。そこの調理場にいた方もありますけれど、たぶん、揃っていたようですわ」