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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

ですから、あなた方には分りきったことが、我々には分っていない。そこを教えていただかなければならないのですよ。では矢代さんにおききしますが、犯人は外から来やしないと仰言る、そのワケはなぜでしょうか」

「物盗りの仕業でないからですよ。あいつを殺す目的で外から誰かがやってきますか」

「この家の住人以外に望月さんを殺す者が有り得ないというワケは」

「そんなことは知りませんよ。ただ、この家の住人なら、たいがいの連中が望月の息の根をとめたがっていましたよ。外から来るまでもないのだから」

「なるほど。然し、御説の内容だけでは外部から犯人が来なかったという理由にはなりませんな。廊下の出入口からはいって階段を登る、登ったところにあるのが望月さんの部屋だから、先ずそこへはいってみる、目をさましたので殺す」

「兇器の短刀は談話室の棚に飾られていたのだから、犯人は内部の事情に通じた者でしょうな。始めから殺意があって、そこから持ちだしたのでしょう」

「なるほど。然し、それも必ずそうだと断定しうる性質のものじゃありません。短刀はその日もそこに飾られていましたか」

誰も返事をする者がなかった。