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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

愛慾の音と殺人の音と、いったい、どこかに区別がありますか」

食事が終ってドヤドヤ隣の広間へ流れて行く波の中で、八丁鼻がだしぬけに、あやかさんに呼びかけた。

「もしもし、奥さん。失礼ですが、そのスリッパは」

「はア、なんでしょう、このパントウッフル」

「パントウ、はア、なるほど、スリッパじゃアない、お靴ですな。そのお靴はいつもはいていらっしゃいますか」

「ずいぶん悪趣味だと仰言るのでしょう。皆さんにカラカワれるのよ。でも、こんなオモチャみたいな華やかなのが好きなんですもの。外に七足ほど似たような悪趣味な部屋靴があるわ。その日の気分で、あれをはいたり、これをはいたり」

「みんな鈴がついてるのですか」

「鈴のついてるのは、これだけ」

「昨日もそれをおはきでしたか」

「昨日。昨日ね。そう。昨日もはきました。でも、外のも、はきましたわ。なぜですの」

「鈴がひとつとれていますが、いつなくなったか、覚えていらっしゃいませんか」

「そう。この鈴がひとつね、今朝、はくときに気がついたのよ。とんだり、駈けたり、つまずいたり、私はチョコチョコしてるから。でも、このパントウッフルは、私は特別に好きなのよ。