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ふれんぞくさつじんじけん

不連続殺人事件

坂口 安吾

「日本小説 第一巻第三号~第二巻第七号」1947(昭和22)年8月1日~1948(昭和23)年8月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,047 字 · 322 页

青空文庫

広間のデスクのヒキダシに歌川家のネーム入りの用箋や封筒原稿紙など入れてあり、来客一同、必要に応じて勝手にとりだす仕組になっていたのである。

「どなたか、ヒキダシの鍵束を見た記憶はありませんか」

「僕は見たよ」と、セムシの内海明がアッサリ言った。

「いつですか」

「そうだな。僕は原稿紙を持たずにきたから、原稿紙があるというから、ひっかき廻したんだけど、用箋と封筒ばかりで、原稿紙が却々見つからなくってね。来てまもなくだから、もう一ヶ月以上の昔の話さ。何月何日だか、分りゃしないよ」

「望月さんの部屋と隣室の間にドアがありますが、あのドアの鍵は?」

「部屋の間のドアは鍵をかけたままで、その鍵はお客様方にはお渡してありません。然し、盗まれた鍵束の中にはその鍵も勿論ありました」

「あの隣室はどなたでしたか?」と、カングリ警部は各人の部屋の位置をしるしてもらった図面をひろげて、

「ああ、丹後弓彦さん。作品はかねて雑誌で拝読致しております。昨夜は何か隣室に変った物音をおききになりませんでしたか」

「毎晩変った物音ばかりきかされていますから、一々気にかけちゃいられませんさ。王仁が死んで、今晩から安眠できるだろうな。