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ちからもち

力餅

島崎 藤村

「力餅」研究社、1940(昭和15)年11月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 65,974 字 · 130 页

青空文庫

土に住むものは皆、古い穴にまんぞくしている中で、からを破って出て行こうと思い立ったせみの勇気には感心します。この若者を青空のほうへ送り出すというは、土のもの一同の新しいよろこびです。そうあいさつしました。

それから、余興に移りますと、水に住む音楽者たちがそこへ頼まれて来ていまして、なかまの合唱がありました。そのすずしい声にまじって、びっくりするほど太い、しかし低い音で、調子を合わせるものもありました。

「ブーッ、ブ、

ブーッ、ブ。」

そんな声を出すのは食用がえるというやつでした。この食用がえるは普通のかわずよりも大きく、知らないものにはお化けとまちがえられたくらいの大がえるで、太鼓のような腹から、あの太い声が出るものですから、なかまの合唱に今日ではなくてならない歌い手のひとりとなっているのです。

さて、送別会もすんでみると、せみに別れを告げた土なかまにはいろいろなことを言うものが出てきました。

「あんなことでせみが飛べるかしらん。」

と言うのはねずみでした。

「せみはすこし思いあがっているのじゃなかろうか。」

と言ってみるのはありでした。

「そんなら、わたしをごらんなさい、わたしは一度も古い着物などをぬいだことがない。