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ちからもち

力餅

島崎 藤村

「力餅」研究社、1940(昭和15)年11月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 65,974 字 · 130 页

青空文庫

五 かしどりのあいさつ

わが家の墓地は村の裏側にある古い丘の上で、永昌寺というお寺の境内につづいたところにあります。すぎの木立ちの間から、浅い谷の向こうに木曾らしい石をのせた人家の板屋根、色づいた柿のこずえなぞが見えるところです。大黒屋とか、八幡屋とか、その他いろいろな屋号のついた家々のこけむしたお墓が並んだわきを通って、すぎの枯れ葉の落ちているしめった土をふんで行くだけでも、なんとなく心の改まってくるようなところです。その墓地の突きあたりに、どまんじゅうのかたちに小高く土を盛りあげ、青々とした芝草の色もむかしを語り顔なのが、父の長く眠っている場所でした。永昌寺の本堂で母の葬儀をすませたあと、遺骨は父の墓のわきにうずめましたから、同じかたちのものが二つそこに並びました。

墓は死んだ者のためにあるのではなくて、生き残る者のためにあるのだと、ある人もそう申しましたっけ。

五 かしどりのあいさつ

かし鳥があいさつに来ました。

この鳥はおばあさんのようなしゃがれた声で、わたしにあいさつして言うことには、

「お前さんは覚えていなさるだろうが、おれの好きなえのきの実を拾いにお前さまも子供の時分にはよくあの木の下へ遊びにおいでなすった。