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かいじんとしょうねんたんてい

怪人と少年探偵

江戸川 乱歩

「こども家の光」家の光協会、1960(昭和35)年9月~1961(昭和36)年9月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 36,648 字 · 74 页

青空文庫

といって、出ていってしまうと、なにを思ったのか、すっと立ちあがって、ろうかへ出ていきました。

そして、うすぐらいろうかのすみに、身をかくすと、ポケットから、ぐにゃぐにゃしたビニールの仮面をとりだして、あたまから、すっぽりとかぶりました。れいの人形仮面です。

それから、せびろの上着をぬぐと、くるっと、うらがえしにして、また、それを着ました。うらも、おもてと同じように、できている、変装用の上着なのです。しかも、そのうらがわは、赤のひといろ、まるで道化師のようなまっかな上着でした。

そこへ、ろうかのむこうから、この家の主人の野村さんが、和服すがたでゆったりと、歩いてきました。みち子ちゃんが、とりもどせたので、すっかり安心しているのです。

それをみると、人形怪人は、ろうかのすみから野村さんの前に、ぬーっと、まっかなすがたを、あらわしました。

「あっ、きみはだれだっ」

野村さんが、びっくりして、どなりつけました。

「世間では、おれのことを人形怪人といっている。いうまでもなく、くれないの宝冠を、もらいにきたのだ」

たしかに人形の顔をもった怪物です。野村さんは、そいつが、はやくも、この家にあらわれた、すばやさに、おどろいてしまいました。