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かいじんとしょうねんたんてい

怪人と少年探偵

江戸川 乱歩

「こども家の光」家の光協会、1960(昭和35)年9月~1961(昭和36)年9月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 36,648 字 · 74 页

青空文庫

一人二役

西洋の民謡のひとふしらしく、ヒュー、ヒュー、ヒューッと、なんだかものさびしいメロディです。おなじふしを、二、三ど、くりかえしていると、裏庭とのさかいの戸が、音もなくスーッと開いて、黒い人影があらわれました。

小林少年は、そのほうへ、近づいていきます。大きいのと、小さいのと、ふたつの影が、かさなりあうように見えました。

なにかひそひそと、ささやいています。

「あいつは、中村警部にばけています。そして、げんかんから、どうどうとのりこみました。気をつけてください。おそろしく変装のうまいやつです」

小林少年のそんなことばが、とぎれとぎれに聞こえてきました。

「ふーん、さすがにあいつだな。相手にとって、不足はない。いまに、とっちめてやるから、見ているがいい」

なんだか、聞いたような声です。

しかし、まっくらで、顔が見えないので、たしかめることができません。

読者のみなさんは、もうとっくに、おわかりですね。その人は、小林少年と話しおわると、また戸をあけて、裏庭のほうへ、はいっていきます。

小林少年も、そのあとにしたがいました。

一人二役

中村警部にばけた怪人は、応接室にはいると、いちどは、いすにこしかけましたが、あんないした書生が「ちょっと、お待ちください」