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かいじんとしょうねんたんてい

怪人と少年探偵

江戸川 乱歩

「こども家の光」家の光協会、1960(昭和35)年9月~1961(昭和36)年9月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 36,648 字 · 74 页

青空文庫

もうだめだ

破るのには時間がかかる。もっといい方法があるかもしれません」

そのへやのまん中に、大きな机と、りっぱないすが置いてありました。そのほかには、なんの道具もないのです。小林君は、いきなり、懐中電燈を持って、その大机の下へ、もぐりこみました。いままでの、たびたびのけいけんで、床のおとし穴を開くボタンが、机の板の下がわに、ついているかもしれないと思ったからです。

「あっ、あったぞっ……」

机の色と同じで、ちょっと見たのではわからないような、小さなポッチが見つかったのです。小林君はグッとそれを押しました。

もうだめだ

そのとき、地底の水の中では、井上君とポケット小僧が、おたがいのからだをだきあって、ブクブクと、しずみかけていました。さっき死にものぐるいの声で、どなったので、もう、最後の力がつきてしまったのです。手も足もしびれてしまって、もう水に浮いていることができません。

「井上さん、苦しい。助けて」

ポケット小僧が、井上君にしがみついてきました。

「あっ、いけない。しっかりするんだっ」

しがみつかれたので、井上君もしずみそうになりました。このまま、ふたりが、だきあって、しずんでしまえば、もうおしまいです。