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かいじんとしょうねんたんてい

怪人と少年探偵

江戸川 乱歩

「こども家の光」家の光協会、1960(昭和35)年9月~1961(昭和36)年9月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 36,648 字 · 74 页

青空文庫

金庫の中

あいつは魔法つかいみたいなやつですから、金庫なんか、わけなくあけるでしょう。ひょっとしたら、もうぬすまれているかもしれませんよ」

中村警部のことばに、野村さんは青くなってしまいました。すぐ警部をあんないして書斎へ行ってみました。

金庫の中

書斎には、だれもいません。金庫も開いたようすはありません。かんのんびらきの、でっかい金庫です。そのとびらがぴったりしまっています。

「しかし、ゆだんはなりません。いちど金庫を開いて、調べてみるほうがいいでしょう」

にせの中村警部がいいました。野村さんに金庫を開かせて、宝冠をうばいとるつもりにちがいありません。

そのとき、警部は、うっかり、ズボンのポケットに手をいれました。そのひょうしに上着がめくれて、まっかなうらが、ちらっと見えたのです。野村さんは、それに気がつき、ふっと、おそろしいことをかんがえました。

「腹話術……」と、ひとりごとのようにつぶやきます。

「えっ、なんですって?」

警部が、びっくりして、野村さんの顔を見つめました。

「さっきの怪人の声は、腹話術じゃなかったでしょうか」

野村さんが、みょうな笑いをうかべて、いいました。