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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
『文芸』の仕事の間、あついときも上野で暮して、これも実にいい習慣です、その点、やはりのんびりした見とおしがあってね。自分の本棚にない本は無い本だという古典調はないから。楽天的よ。何かまとまった勉学は、自分の書棚だけで出来ないこと痛感していますから。
私のたった一つのおねがいはね、あなたにのんびりしていて頂くことよ。ピンをとめるべきところへはもうピンがちゃんととめられてあるのですから、ユリはがたがたにならないのだから。きょうあたり、こうやって書いていて、いくらか愉しい心が揺いでいるということは、万更でもないでしょう? 沈丁花がいい匂りだからばかりでもないわ。すらりと、簡素で、しかもしんは瑞々しいという日々がつくられるようにしましょうねえ。極めて実際的によく組立てられて、妙なもやもやのない、やっぱり私たちらしい生活にしましょうねえ。形を変えることが必然であると分れば、それに工夫をこらすのが又一つの愉快さをやがて感じさせ、たのしみを与えてくれるというのは、人間の何という見つけもののところでしょう。いいモーターのように小型で便利で能率のいい生活にしましょうねえ。