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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

08 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页

青空文庫

三月三十日

今夜は大層早寝いたします、何だかくたびれがあるの、くたびれが出ていると分るときは、すこし正気に立ち戻ったわけなのでしょう。土曜日ほんとに御免なさい、考えれば考えるほど、すまなかったと思います。

三月三十日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕

三月三十日  第十七信

覚えていらっしゃるかどうか、目白の方から上り屋敷の駅へぬける通りに大野屋という米屋があって、そこはこの辺の大地主の一家のやっている米やで、大変いばった米やなの。そこが配給所になったらいやだナと思っていたら、きのうかえりに通ったら大きい白い紙に謹告として、発展的閉店の余儀なきに至りとありました。うちの配給米屋は目白の消防署の裏です。一週間ごとに配給して来るそうです。一日二人で五合の割で、滞在客は十五日以上、もらえる由。冠婚葬祭には特配なしのよし。三度外食のひとも働きによって食糧がちがって切符制です。甲乙丙とあります。その点どこも同じになりましたね。何号の御飯という点で。

この大野や米やは大した金持故、きっと儲けがなくて人をつかうような方法をとるより一組合員となる方を選び、組合員と云っても、達ちゃんの自動車の組で、いろいろの事情が内にあるわけでしょう。