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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
も正しいし、私がこれからの落雷も、わけがあれば敢てさけないわけです。
下で書いていると、珍しいところがあります。すぐ前で、八ツ手と青木の赤い実が、突然の激しい風に吹きあおられて揉まれるのが見えたり、脚が痛いから坐り直したり、いろいろと。
派出さんかえって来ました。私もかえって来ました、というのは、林町へ泊りましたから。
稲ちゃんは満州へ立ちました。二日の夜九時すぎに。家へ行ったら臥ていて熱があると云って。おやめなさいよと云っていたら、それでも立ってしまいました。今瀬戸内海にてとハガキが来ました。熱もなくなった由。よかったこと。強引ですね。私は、南京虫にくわれたときつける薬と、オーディコロンと、タルク粉と、小さい袋へ毛ぬきだの鋏だのの入ったものをあげました。私は南京虫にくわれると実にひどくてアンモニアをつけてやっとしのぎました。それを思い出して。マヤコフスキーに「南京虫」(クロプイ)という劇があって、現在はどこにでもいるクロプイが、或る時代には全く標本しかいなくなって、南京虫、ネップ、ビュロクラートみんな標本として博物の教室で学生が観察する芝居がありました。