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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
その話をしたひとはハワイがえりの女のひとで十五から二十年いて、かえって十年。あっちに娘たちがいて、孫もあっちにいるそうです。いろんなものをことづけて貰います、ハムも、というとき、このひとは日本風に云わず Ham と発音記号のようにヘムときこえるように云いました。微笑禁じ得ず。だってここの家の職業はおいなりさんの神主なんですもの。可笑しいことねえ。ハワイでおいなりさんを信心していたのねえ。職業はこのヘム夫人が理髪をやって御亭主は自動車か何かをやったんですって。第三高女(東京)を出ていることまで僅か五分間の店先のお喋りで話してゆきました。私は誌上でよく知っていたって。
そのおいなりさんの御託宣で、Tの写真屋に病人が絶えないのは、死霊のたたりだということで、そんな筈はないと云っていたところ、そこのおばあさんが亡くなるとき、自分が若いとき後家で赤坊をもって、それをこっそりうずめてしまったことがあったことや、息子も結婚前そんなような芸当をしたので、大方それでじゃろということを云ったので、おいなりさんにざんげしなくてはならないことになって、それをやって、おまつりをしたのですって。