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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

08 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页

青空文庫

けれどもそれは期待出来ません。むこうへ行っても相当手紙は書けないかもしれないね、と云っていたのよ、十六日の晩も。今度はクレオソート玉がどこにもないし、梅肉エキスだの水を消毒するものだの持たせました。こっちも今年は余程用心しなくてはいけませんね。水なんかひどい水よ。おとなりから飲料水は貰って居ます。

今はもとと方式をかえて、渡辺という運転手はおかみさんと近所に一軒もっているし関根というのは妹と又つい近くに一軒もっていて、うちで御飯をたべる人はなくなりました。こういう変化も時代らしいわね。ですから台所のバタバタは随分減っているわけです、ひところよりも。その点は友子さんもいいわ。お母さんはいつかのKのことをおこりになったばかりでなく、使われる方の気持としてもそういう方を望むわけですね。達ちゃんの代りを(車を動すこと)やるのはTという人ですって。このひとは先に達ちゃんに会いに広島へ行ったとき会ったひとです。なかなかはしこい男の由。でもお母さんはよくそこいらを御承知ですからうまくおやりになりましょう。リューマチスになって早くかえって、一等傷というので又わるくなればいつでも病院に入れて、病気になりながらよく修理で働いたというので感状とかをもらってかえった由。