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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

08 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页

青空文庫

七月二十三日

十一円五十銭也よ、島田までは届けないというので野原まで届けて欲しいとところを云ったら国広屋と云っていました、年よりの番頭が。おばあさんの家は、あの薬屋のある通りに見える松の古木の先ですってね、岩本のお嫁さんのおさとという前も通りました。うちも店は物がありません。達ちゃんから消息まだなしです。

七月二十三日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 山口県島田より(封書)〕

七月二十三日  島田からの第四信

十九日づけのお手紙今朝。ありがとう。

本当に涼しいつづきでした。でも、それではお米が大変でしょう。土用前の十日がよく照りこめばよいというのだってね。その期間が雨つづきでこの頃はこうというのでは困りでしょうね。きのう一日は土用らしくてきょうはもう曇天よ。

きのう朝十時半のバスで野原からかえりました。野原から島田市のところまでは人通りが東京のどこかの横町のようよ。野原の徴用土工たちは、朝六時すぎ、夕五時ごろ群をなしてあの前を通ります。朝早くお墓りをして、それからかえったわけです。あの丘ね、あなたが小さかった頃よくお遊びになったという、あの小山の横手にすっかり官舎が出来て、まああんなに景色のいいところだのに、家と家とはくっついて木もないのよ、そのすぐ上が火葬場。