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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
生活において、非常に運動神経が鍛えられていて、どんな角度が生じても自身としての均衡の破られない力がつくことは、これからの世界が私たちに求めている資質の一つね。
ざっとこういうようなわけなの。ポツポツと月の中に荷物を動かします。チクマもまさか、合の手にこんな引越しがはさまっていようとは思って居りますまい。可笑しいわね。このドタバタが一かたついて、私はやっと落付きますでしょう。四月以来随分輾転反側でしたが。この家は足かけ五年でした。間に十三年という年をはさんで、十三年のときと今との心持をくらべて見ると興味があります。ずっと今の方が進歩して居ます、必然ですが。極めて巨大なスケールで、モラルを示されているし。こうやって、いろんな思いをして暮して、ユリが段々事物の価値をはっきり見るようになって、さっぱりして、しめっぽくなくて、かさばらなくて、そしてユーモラスであるようになれば、少しはほめてやってもいいと思います。
ヘミングウェイの小説は相当なもので、自然主義期の感情の質との相異を沁々感じさせました。透明である憤り、憎悪、そういうものは今日から明日へのものね、例えばドストイェフスキーなんかにしろ、人間のそういう感情はいつも暗さを伴っていました。