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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

08 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页

青空文庫

歴史だの生活だのの力学は、昔のひとの転変と呼んだものですね。

今は労働つづきで疲れるから全く枕につくとすぐという程よく眠ります。林町の間どり、ぼんやりとしか御存知ないでしょうね。八畳と並んで十二畳があって、この十二畳が問題の室なのよ。何しろバカに大きい床の間がある上に、間どりの関係から、うちで悲しい儀式があるときは、いつもこの十二畳と八畳とがぶっこぬきになって、神官がおじぎしたり何かして、奥は、誰もそこで暮したことのないという部屋です。

だから今度はね、私が一つコロンブスになるのよ。そこに生活を吹きこもうというわけです。あたり前に着物がちらかったり、お茶があったりする、そういう生きた人間の場所にしようというと、咲枝はあらァうれしいわ、お願ね、ユリちゃんならきっと出来るわと大いに激励してくれました。私はこっちのひろい室へ大きい本棚を立ててね、あの白木のよ。その御利益に守られて大いに活力のある座敷にしようと思って居ります。

今のようなときこそ本当の落付きがいるということ、実にそう思います。あれよ、あれよと景観に目をとられて、と云っていらっしゃるが、それさえ現実にはまだ積極の方よ。