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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
小包二つも送り出しましたし。本とタオルねまきに紐を。本は御注文のがないのに、ほかのあれこれ入っていてつまらなくお思いになるかもしれないけれども、まあもし気がお向きになればと思って。文庫類の品切れの多さはどうでしょう。
『文学史』、一昨日あれから神田へまわりました。東京堂で年鑑を見たらアルスから出ているので、とってくれと云ったら、紫の上っぱりを着た女店員曰く「お手間がとれるんですけれど」「何日ぐらいでしょう」「サア……十日もかかりますでしょう」十日では待てっこないわ。アルスどこでしょう、そこをきいて、同じ通りのずっと九段よりなのね、そこへ出かけて買いました。この頃はすべて配給会社を通じてやって、もとのように出版元へいきなり本が行かないことになって手間がかかる上に、どういうのかしら本やの店員が別なもの、何かデパートの廉売品売場の売子のような荒っぽい気風になって来ているのはびっくりいたします。本へのやさしい心持や、本やで働いているという心持のどこかにあったちがいはなくなって来ているのね。この一年の間にこう変ったとおどろきます。
あの『文学史』、残念ながら訳がよくないようです。