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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

08 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页

青空文庫

十月二十一日

十月二十三日

では火曜日ね。

十月二十一日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(「ロシヤ寺院・哈爾浜」の写真絵はがき)〕

眼の本と文学の扉をお送りいたします。きょうは又曇りましたね。けさ早く南江堂へ出かけたら、どこもかしこも防護団の制服をつけた人だらけでした。帝大の鉄柵は、鉄回収のために木の柵になって、何となし牧場のようです。正門入口の門扉も木の柵ですから。私は昨夜思いついて、いつかあなたの着ていらした毛糸の(糸の交った方)ジャケツを直して、いざというとき着ることにしました。いい思いつきでしょう? 誰にきいても私たちのまわりでは、本はあきらめています、手がないという形らしいようです。

十月二十三日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 駒込林町より(封書)〕

十月二十三日  第四十六信

きょうはからりとした天気です。二階の手摺りのところには夜具をいっぱいほしてあります。昨夜は寒かったことね、はじめて室へ火鉢をすこし入れましたが、いよいよもって心細いことは、この火鉢で冬の夜仕事は出来るだろうかということです。

ところで、きょうは可笑しい日です。空気の工合か何か、うちじゅうの女のひとたちは顔が乾いて、何だかくすぐったくてピリつくようで閉口というの。