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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
こういう話をよむと、龍之介の「地獄変」を思い出すの。あの画家は、娘を火の中に投じるヒロイズム至上主義はわかるし、作家はその面でかいているけれど、そこに何か日本の芸術至上主義の体質があらわれているようです。そのフランスのことを書いた画家は、体力というが、体の小さい日本人は戦いにつよいとかいていて、つよいのは本当だが、どういうときどうつよいかが本質の問題であるように、芸術の上の情熱もそこにかかっているわけでしょう。(つまりこんな風に、その本のなかでも話してゆくことになるでしょうと思います)
二十六日の日曜日にはね、世田ヶ谷へお出かけです。十七日が防空演習でのびて、その日になります。一日の午後から二日休みのつづく日に、もしかしたら国府津へ出かけます。この間の休日は行かなかったの。国男さんと太郎とだけ行きました。もし今度も私が行かなければ、咲枝が赤坊つれてゆくからたのむものはたのみましょう。一寸行ってみたいところもあるわ。一昨年の夏行ったきりでしたから。この間行ったとき国男さんが、きれいに真青な橙の大きいのをもって来ました。初めて、うちの樹になったのですって。