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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
08 一九四一年(昭和十六年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页
来年三月卒業のひとたちが十二月にくり上げ卒業になるので、いろいろと影響しています、東大は来年は夏休みなしになるそうです。
肉はすっかり減って、一週間にせめて一度という位になりました。魚は不自由です、野菜もどうやらというところよ。牛乳はうちは半分となりました。ガスも電気もずっと節減。この間目白へ行ったらば、あすこの町会の貯金が二円(毎月)になった由。私のいたときは五十銭だったのが八十銭になったのに。僅か二ヵ月よ。そして公債も買うのですって。さち子さん、つらいわと云っていました。二円というのは、この辺なみよ。あの辺はそういうことも高率だし第一、うちはなかなかそれがむずかしいという人は一軒もないのだから、やり切れないというのもわかるでしょう? ユリが、よ。
今うちの庭には山茶花が美しく咲いています。赤っぽいのはいやに上気せたようで苦しい色ですが、これは白いところへほんのり端々に紅がさしていて清楚可憐よ。机の上にずっとさして居ります。
十條に白い山茶花が咲いていた庭、そこでたべた味つけ御飯。花もいろいろの眺めね。
この山茶花はもう古木なのよ、絶えてしまうと惜しいと思います、何とか植木屋と相談して永もちさせたいわ。