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ごくちゅうへのてがみ

獄中への手紙

宮本 百合子

08 一九四一年(昭和十六年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 230,599 字 · 458 页

青空文庫

春代というまだまるで無邪気な女の子もいます。この娘は、この寒いのにカラ脛でいるのよ。ピチピチした娘さんです。この頃私には、高等小学だけ出て働いている若い娘さんよくわかるようになりました。女学校卒業、それ以上の、皆職業婦人でもタイプがちがうわ。電車にのってもよくわかるようになりました。小学校の女教師というものの文化の内容の大略も。二十枚ほどの間にこれらの若い女たちはどんな生活を示すでしょう。ああふっと思いついた。この二十枚と、あとからかく二十枚ほど、続篇として構成したら(人々の名なんかみんな一致させて)一つの本となるときすこしまとまって面白いでしょうね。これも万更すてた知慧にあらず。

今、時間は充実して、それ故きめこまやかに重く平らにすぎていて何といい心持でしょう。評論をかくたのしさ、それは丁度しこった肩をもんでそこから筋にふれてゆくような感覚。小説をこうやって考えているたのしさ。いろんな人々の顔、感情、動き、景色。そこにある生活の熱気。声。脚の恰好。ネクタイ。いろいろいろいろ。しまりかかった省線へいそいでのりこもうとして、すぐそのドアによっぱらいの顔が見えたのでスラリとそこをよけて次の車にとび込む娘の、都会生活の中での神経の素ばしっこさ。