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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
「石狩川」大観堂、1939(昭和14)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 253,535 字 · 506 页
並んだ背中がそれを語っていた。
たじたじとなって彼は蒼ざめたのである。人々の前にあるのは屍棺であった。北向きの壁に寄せて祀られ、包まれた白い布に、取りあえず松の葉が投げかけられていた。哀悼の思いで目を伏せていた一同であった。
表口までまわる僅かの間に、彼は玉目三郎を憶いだした。今朝がた狂乱の姿を見せたその若い妻が、暗い負担となって感じられて来る。生ぐさい血のりの臭う鹿や熊の生肉を食った踏査の数日は考えただけでも嘔気を催すが、それにしても、玉目三郎だけを出してやらねばならぬ理由とはならなかった。生命をつないで立ち戻った彼らは、結果から見れば無駄なことを強いたことになる。終始一しょの行動が取れていたら、この暗い負担に翳らず済んだであろう。
土間に立った阿賀妻は、座敷の奥に黙然としている邦夷の眼をさがした。その一日の労苦が彼の頬をまた一削りうすくしたようであった。灯影にゆらぐ暗たんとした顔で、彼は人々の頭越しにゆっくり頷いてみせた。
框に腰をかけて阿賀妻は草鞋を脱いだ。取った脚絆と手甲をそれぞれの紐で結えてその隅に置いた。
「ごめん」と人々の背を掻きわけた。