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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

けれども、一つの国で共産党の指導者という任務が、どれだけ重要な意味をもつものであるかということは、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)暮しをしているうちに伸子の精神にうちこまれていた。佐野学がつかまったということは、非合法ながら成長しつつある日本の共産党にとって、打撃であることを、伸子は実感にうけとった。モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)で去年の三月十五日の大検挙を知ったときは、それが泰造から送られた赤インクのカギつきの新聞を通じてのことだっただけに、伸子は自分という個人にかけられる赤インクのカギの窮屈さの面だけを痛切にうけた。こんどは佐野学もつかまった、それが本当だとすると、いまの伸子は、それを日本の共産主義運動にとっての事件として感じた。共産主義に対する「弾圧」の真の意味、そういうことを行わずにいられない権力の本質的な非条理は、ヨーロッパへ来てから伸子にもまざまざとわかるようになった。

考えこみながら出かけていた足を、伸子は急にとめた。もしこのまま磯崎恭介の葬式に参列するとすれば、スカートに毛糸のブラウスの服装では、失礼すぎた。