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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

伸子のこころもち、というより考えは、素子からの手紙によって、ふたとおりにも、みとおりにも動かされた。多計代がモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へつくなり、停車場から自分だけ藤原威夫の住居へ行って、一日じゅうそこにとどまっていたということは、伸子に、意外というよりも複雑なニュースだった。何の意味があって多計代は、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)でそんな、こと更らしいふるまいをしたのだろう。

ことしのはじめ、伸子が肝臓炎になってモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)大学の附属病院に入院していたころ、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)駐在の日本大使館づき陸軍武官は、二人に増員された。酒のみで、いつも豪放磊落らしくふるまっていた木部中佐を補佐する意味で新しく赴任して来たのが陸軍少佐の藤原威夫だった。そういうことについては何にも知らず、一月はじめから入院生活をしていた伸子は、病気がのろのろと恢復しつつあった二月末のある日、突然、藤原威夫の訪問をうけた。彼は初対面の伸子に、自分を全く個人の資格で紹介した。昔から佐々の家庭に出入りしているある男の長男が、偶然藤原の細君の妹にあたる娘と結婚することになったことから、その披露の席で藤原威夫も佐々泰造と多計代とにちかづきとなった。