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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
蕗子は、モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へ送られる手紙は必ず、日本のどこかで、誰かの目を通るであろうことをおもんぱかって、ぼんやり語っている。だが、蕗子の弟が画家として、自分をどこに置くかということを考えつめた結果、いわゆるプロレタリア階級のための美術という理論やその作風に納得できなかったために、むしろ死を選んだということは察しられるのだった。蕗子は、書いている。彼は誠実な青年でした。私は彼にたいしていい姉ではありませんでした。あんまり自分のことにかまけていたことが、今になって悔まれます。蕗子のいまもふっくりしているであろう手をとって伸子は、そうよ、そうなのよ、という気持だった。そうかいているとき震えた蕗子の唇が感じられた。去年レーニングラードで保が死んだしらせをうけとったとき、伸子を幾日も普通のこころもちに立ちかえらせなかったのは、同じ思いで蕗子の手紙にたたえられている、亡くなった弟への限りないいとしさと自責だった。
歴史はこのようにしてすすめられてゆくのでしょう。そう読んだとき、伸子の視線が涙でぼやけた。四月ごろ、彼の友人であった優秀な人々の間に多くの犠牲を生じました。