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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
保は、絶対の真理とか、絶対の善・公平さという存在し得ないものを求めて、敗北した。保は、主観的にはげしく真実を求めながら、現実の生活の中では自分の絶対のとりでに立てこもって歴史の流れに抵抗し、破れたところがある。蕗子の弟である若い画学生の生きかたとその苦悩は、彼女の手紙によれば、保とは全く反対のように思えた。その青年は、プロレタリア芸術の必然を認めた。しかしそこにある理論と芸術作品の実際に納得しきれないものを発見して、その否定面をのりこせない自分を歴史にとって無価値な者として一図に死なしてしまったのだった。
蕗子の手紙は、計らずも伸子に一つの記憶をよびさました。一九二三年の初夏、進歩的な人道主義作家として知られていた武島裕吉が軽井沢で自殺した事件があった。武島家の所有であった北海道の大農場を農民に解放したりしたその作家が苦しんで、破滅した自身の内と外との複雑な矛盾は、個性的なものでもあったが同時に、そのころの日本を風靡していた社会思想と無産者文学理論の素朴さからのもつれもあった。武島裕吉は、ある婦人との死によって、その錯雑から逃れたのだった。武島裕吉に弟がいくたりかあって、その一人が文学者だった。