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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

「ポリニャークのところへ行くんだって?」

ときいた。

「ぶこちゃんはどうする?」

こういうときいつも伸子は、行きましょう、行きましょうよと、とび立つ返事をすることが、すくなかった。

「わたしは、消極的よ」

すると内海が、そのパラリと離れてついている眉をよせるようにして、

「それじゃ困るんです。今夜は是非来て下さい」

たのむように云った。

「どうも工合がわるいんだ――下へ、アレクサンドロフが来て待ってるんですよ」

「そのことで?」

びっくりして伸子がきいた。

「そうなんです。秋山氏があんまり要領得ないもんだから、先生到頭しびれをきらしてアレクサンドロフをよこしたんでしょう」

アレクサンドロフも作家で、いつかの日本文学の夕べに出席していた。

「まあいいさ、ポリニャークのところへもいっぺん行ってみるさ」

そういう素子に向って内海は、

「じゃ、たのみます」

念を入れるように、力をいれて二度ほど手をふった。

「五時になったら下まで来て下さい。じゃ」

そして、こんどは、本当にいそいで出て行った。

「――急に云って来たって仕様がないじゃないか――丁度うちにいる日だったからいいようなものの……」