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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)のバスは運転手台のよこから乗って、順ぐり奥へつめ、バスの最後尾に降り口の畳戸がついていた。いくらかずつ降りる乗客につづいて、伸子たち四人も一足ずつうしろのドアに近づいた。
「あなたがた来られてよかったですよ」
秋山宇一が、白いものの混った髭を、手袋の手で撫でるようにしながら云った。
「大した熱心でしてね、今夜、あなたがたをつれて来なければ、友情を信じない、なんて云われましてね――どうも……」
今夜までのいきさつをきいていない伸子としては、だまっているしかなかった。もっとも、日本文学の夕べのときも、ポリニャークはくりかえし、伸子たちに遊びに来るように、とすすめてはいたけれども。――
とある停留場でバスがとまったとき内海は、
「この次でおりましょう」
と秋山に注意した。
「――もう一つさきじゃなかったですか」
秋山は窓から外を覗きたそうにした。が、八分どおり満員のバスの明るい窓ガラスはみんな白く凍っていた。
乗客たちの防寒靴の底についた雪が次々とその上に踏みかためられて、滑りやすい氷のステップのようになっているバスの降口から、伸子は気をつけて雪の深い停留場に降り立った。