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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

「バレーの研究って――わたしたちはもちろん素人ですがね、自分で踊るんですか」

「そうじゃありません、僕のやっているのは舞踊史とでもいいましょうか……何しろ、ロシアはツァー時代からバレーではヨーロッパでも世界的な位置をもっていましたからね。――レーニングラードには、もと王立バレー学校がありましたし、いまでも、その伝統があってバレーでは明らかにモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)をリードしていると思います」

「――失礼ですが、わたしたち、お茶がまだなのよ」

伸子が言葉をはさんだ。

「御免蒙って、はじめてもいいかしら」

「どうぞ。――すっかりお邪魔してしまって……」

「その外套おとりになったら?」

明らかに焦だって伸子が注意した。

「あなたに見物させて、お茶をのむわけにもいかないわ……」

そのひとにもコップをわたして、バタをつけたパンとリンゴで茶をのみはじめた。そうしているうちに、伸子の気分がいくらかしずまって来た。不意にあらわれた宮野という人物に対して、自分は礼儀の上からも実際の上からも適切にふるまっていないことに気づいた。話がおかしいならおかしいでもっと宮野というひとについて具体的に知っておくことこそ、必要だ。