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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
丁度せり上りのように、生活の半分は奈落と舞台との間の暗やみにのこっていても、もうせり上ってそとに出ている生活の半分が、猛烈にのこっている半分について意識し苦しむのだ。伸子にはそれが自然だと思えた。相川良之介が自殺したとき、その遺書に、彼の身辺の封建的なものについてはふれない、なぜなら、日本の社会には多少ともまだ封建的なものが存在していると思うし、封建的なものの中にいて封建的なものの批判は出来ないと思うから、とかかれていたことが思い出された。当時伸子には、その文章の意味がよくのみこめなかった。けれども、こうして話している吉之助を見ても、伸子自身について考えて見ても、自分のなかに古いものももちながら、吉之助のようにはっきりそれを肯定しながらもその一方で新しいものを求めているのが真実だった。そこに矛盾があるということで新しい道を求める思いの真実性が否定されなければならないということはないのだ。伸子は、そういうごたごたのなかでひとすじの思いを推してゆく人間の生きかたを思い、悲しい気がした。保を思い出して。保には、こうやって矛盾や撞着の中から芽立ち伸びてゆく休みない人生の発展がわからなかったのだ。