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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
「パ・オーチェリジ(列の順)と云ってすましてましょうよ、ね?」
パンを買うにも、劇場や汽車の切符を買うにもモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の列の秩序はよく守られた。長い列の中でも、ちゃんと番さえとっておけば途中で別の用事をすまして来ても、番が乱されることはなかった。モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の市民生活のモラルの一つなのであった。
伸子たちが評定している間もなく、玄関の呼鈴が鳴ってソコーリスキーが帰って来た。細君がいそいで出迎える気配がした。ひそひそ声で訴えるようにしゃべっている。夫婦の寝室になっている部屋のドアがあいて、しまった。
するとアニュータが、伸子たちのドアをノックして、戸をしめたままそとから高い声に節をつけて、
「アーベェード」
と呼んだ。
伸子たちがこっちのドアから出てゆく。その向い側のドアがあいて、ソコーリスキー夫婦が出て来た。下手な芝居の一場面のような滑稽なぎごちなさで四人がテーブルへついた。きょうもよく磨いた長靴をはいているソコーリスキーが、テーブルに向って椅子をひきよせながら、
「さきほど、家内が部屋のことについてお話ししたが、よく御諒解なかったそうでしたね」