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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

「アニュータは、うちへそういう人が来たっていうんで亢奮してだまっちゃいられないんだね。絶対秘密だってみんな話してきかせた。どうせしゃべらずにいられないんならわたしを対手にした方が安全だから、アニュータもばかじゃない」

伸子は茶をのみながら考えていて、

「部屋がみつかりさえしたら、ひっこしましょうね」

と云った。

「たとえわるい部屋でもね」

いかがわしい事件にかかわりのある家に自分たちがいることを伸子はいやに思った。モスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)へ来て一年たつ間、伸子たちの存在は何の華々しいこともないかわり、平静で自由であった。もしミャーコフという保健人民委員のいざこざにつれてどういういきさつからかそれに荷担しているソコーリスキー一家の生活がひっくりかえった場合、それにつれて自分たちの生活まで一応は複雑な角度から見られなければならない。そういうことは伸子にいやだった。保が死んでから、かっきりソヴェト生活へうちこまれた自分しか感じられずにいる伸子にとって、そういう事態にまきこまれるような場面に自分をおくことはあんまり本心にたがった。

それには素子も同じ意見で、熱心に自分のきもちを話す伸子を半ばからかいながら、