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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
自分が淋しくていにくいところへ、もっと淋しがりの伸子をやる。前金を無駄するのがばからしいという気持から――。しかし、伸子が行って見る気になったのにはどっちみちどこかへ室がいるのだからという実際の判断とともに、その淋しさというものへの彼女自身のこわいものみたさもあるのだった。
グーセフというノヴォデビーチェの夫婦には四つばかりの男の子があった。朝、八時すぎに夫婦がそろって出勤してゆく。暫くして、田舎出の女中が、男の子を新開町の中にある托児所へつれて行ってもどって来る。それから伸子が食堂で朝の茶をのみ、午後四時に、また一人で食堂の電燈の下で正餐をたべた。九時に、又同じようにして夜の茶をのむ。毎晩きまってそのあとへ、夫婦がつれだって、ときには集会の討論のつづきの高声でしゃべりながら、帰って来た。グーセフの家では夫婦とも勤めさきで正餐をたべた。
保健婦であるグーセフの細君は、ルイバコフの細君のように、自分の髪にマルセル・ウェーヴをかけて、女中のニューラに絶えず用をあてがうような趣味をもっていなかった。托児所へ送り迎えをしなければならない小さな子供がいるから女中もおいているという風なグーセフ夫婦は、ひる間女中の時間がすっかりあいているそのことから下宿人をおくことを考えついたらしかった。