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どうひょう
道標
宮本 百合子
第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页
作者が、気づかずつい書いてしまっているのだとは思えなかった。不注意ということで、こんなにくりかえしがされるものだろうか。
伸子は、雨にぬれた街の夜空に赤くネオンが燃えている窓からはなれて、テーブルへもどり、またその小説のところどころをあけて見なおした。同じ号に「解決された問題と新しき仕事」という織原亮輔の論文があり、その前月号に篠原蔵人の「芸術運動における左翼清算主義」森久雄の「プロレタリア大衆文学の問題」というのがあった。レーニンやルナチャルスキーの引用にみちているこれらの論文はどれもプロレタリア文学そのほか階級的な芸術運動が、大衆の生活へ結びついて行かなければならないということについての討論だった。結論として、誰にでもわかるような小説の必要ということが力説されていた。小林多喜二という人は、もしかしたらやさしい小説をかこうと思って、ビクビクとかモジモジとかいう表現を、こんなに多すぎるほどとり入れたのではなかろうか。伸子は、このモグモグビクビクのために、せっかくしっとりした小説の世界は安価にさせられ、重量を失っていると感じた。しかし、と、伸子はまた視点をうつして考えるのだった。