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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

おどろいて笑いながら、つづけて咳きをした。そこは零下三十五度だった。雪が珍しいというのではなく、こんなに雪の降る、このモスク※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の生活が、伸子の予感をかきたてるのであった。

食事も終りかかったころ、瀬川雅夫が、

「さて、あなたがたのきょうのスケジュールはどういう風です?」

と、伸子たちにきいた。

「別にこれってきめてはいないんですがね」

きな粉色のスーツが黒い髪によく似合っている素子が答えた。

「大使館へでも一寸顔だしして来ようかと思っているんだけど。――手紙類を、大使館気づけで受けとるようにして来たから……」

秋山宇一は、黙ったままそれをききながら小柄な体で、重ね合わせている脚をゆすった。

「じゃ、こうなさい」

席から立ちかけながら、瀬川が云った。

「もう三十分もすると、どうせ私も出かけてВОКСへ行かなけりゃならない用がありますから、御案内しましょう。ВОКСは、いずれ行かなければならないところでしょうから」

「それがいいですよ。ВОКСを訪ねることは重要ですよ」

濃くて長い眉の下に、不釣合に小さい二つの眼をしばたたきながら、我からうなずくようにして秋山宇一が云った。