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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

のひとめにはわかりようないことだった。伸子たち一団がまきちらしながら歩いているあらわな階級性、それは、小枝や和一郎が全然無意識であるにしろ、中国解放の味方でもなく、日本の人民の味方でもない日本の階級を感じさせるにちがいないものだった。

伸子は、そのことによって苦しむ自分としての階級の意識を自覚し、同時にまた、そういうこころもちだけをとりだして傷つけられている自分の、ひよわさをも意識するのだった。

日貨排斥が行われている上海へ、カトリ丸も寄港したわけだった。船客たちの多くは、上海の競馬とか、日本で見られないキャバレーとかいうことで、この都市を知っているわけだった。

「どうした? みんなもあがったの?」

伸子がきいた。

「わたしは、お父さまのおともで、ちょっと買いものをしに上陸しただけ。――お兄様は、あれでも五六時間、あっちこっち御覧になったんじゃない?」

「僕は、西川さんのところによばれていただけだ――歩かなかったな」

カトリ丸の船長は、シャンハイの市街見物に、制限を加えたらしい話だった。

それにつけても、小枝は、寄港地ごとに、上陸する、しない、でもめた四十日の船旅が思いかえされる風情で、