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どうひょう

道標

宮本 百合子

第一部「展望」筑摩書房、1947(昭和22)年10月号~1948(昭和23)年8月号<br> 第二部「展望」筑摩書房、1948(昭和23)年9月号~1949(昭和24)年5月号<br> 第三部「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年10月号~1950(昭和25)年2月号、1950(昭和25)年4月~12月号<br> 資料「展望」筑摩書房、1949(昭和24)年8、9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 846,457 字 · 1672 页

青空文庫

この插話を小枝からきいたとき、伸子は、さぞ若い連中がへこたれたろうと思って、おかしかった。笑う伸子に、小枝が心配そうな眼ざしで、

「そんなに笑わないで頂戴」

と云った。

「あの朝、わたし何だか自信がなくて、いくら、こんなところはおやめなさい、って云っても、お兄様ったらきかないんだもの。――まるで意地をはったみたいにして……」

小枝の不安は、よりどころないことでなかった。泰造は、その日の夕方、外出から帰って来るといあわせた伸子に、朝のできごとを話した。

「どこの、のら息子どもが、朝っぱらから、こんなところにとぐろを巻いているのかと思って近くへ行ったら、和一郎と小枝だ」

しり太の眉根をしかめて泰造が頭をふった。

「まったく、仕様がない」

泰造の心には、和一郎に対して、とりかえしようのない不信頼がうちこまれたらしかった。

「将来まじめに建築でもやろうと云う者なら、折角の機会に観ておくべきものは、ありあまるほどあるんだ」

泰造が、きびしく和一郎を批評する場合でも、多計代はそのことの主な責任を小枝に負わせて弁護した。小枝が享楽的で和一郎に勤勉なこころをふるいたたせようとしないから、と。