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さこく
鎖国
和辻 哲郎
日本の悲劇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页
従って蒙古人への復讐という如き考のなかったことは確かである。のみならず、初期の倭寇が目ざしたところは、主として米であった。数十艘或は数百艘の船をもって南鮮の沿岸を襲い、高麗政府の租米運漕船の捕獲、陸上の粗米倉庫の掠奪などをやるのが、彼らの仕事であった。その他には沿岸農民を捕虜として連れてくることをもやったが、それ以外はただ食糧の獲得がねらいであって、征服とか植民地獲得とかの如きことは全然考えていない。して見ると、一三五〇年の頃には、何か特別に食糧が不足する事情があって、彼らをこの食糧獲得の運動に追い立てたのではないかと考えられる。
これがきっかけとなって、一度掠奪の味を覚え、その方法が見出されると、あとは同じような特別の事情がなくとも、倭寇は継続されたであろう。内乱の継続によって一般的に食糧の不足を来たしていた当時の日本にとっては、米は貴重品であったに相違ないからである。だから倭寇がその後連年続き、年と共に猛烈になって行ったことは当然といわなくてはならぬ。一三七五年――一三八八年の十四年間には、南鮮の四百カ所が倭寇に襲撃されたといわれている。これは高麗王朝にとっては深刻な外患であった。