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さんまいつづき

三枚続

泉 鏡花

「大阪毎日新聞」1900(明治33)年8月9日~9月27日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 63,572 字 · 124 页

青空文庫

」

お夏は何にも謂わないで微笑みながら、

「八銭、七銭、五銭、合せて十二銭、三十二銭、十六銭。」

愛吉慌しく急込んで、

「おっと! と。」

「またかい。」

「大概可うがすがね。」

「算用が大概じゃあ困るからね、また遣損なったんでしょう。」

「ええと、今何でさ、合せてなんて、余計なことを言いなすった時、拇で引懸けて、上が下りて一ツ飛んで入りましたっけ。はてな、」

お夏は帳場格子に肱をついて、顔を出して、愛吉が手なる算盤を差覗いた。間近に照らす洋燈の明に、と見れば喧嘩の名残である、前髪が汗ばんでいた。頬にかかるのは愛嬌毛で、

「幾ツ入違えたの、お直しな。」

愛吉は小指でちょいちょいと耳を掻き、

「珠を幾つ遣損なったか、それが分りますと可うがすがね。」

お夏は肱を掛硯の上へ支き直して、明の後へ胸を引いた。

「もうこっちへお寄越しなさい。」

愛吉は一議もなく、算盤と一所に額を突出し、お辞儀をして、

「どうぞ願います。」

入違いにぽんと投出す、帳面を受取って、愛吉は膝の上。

「読みますぜ。」

お夏は前髪の下へ、美しい指を一本、珠を狙って傍目も触らず、

「さあ、」

「しっかりおやんなさい。